ワーキングホリデーで恋人になったカナダ人

派遣会社を転々とし、やっと正社員の仕事に就き、もうすぐ4年が経とうとしていた。仕事に文句はなかったけど、経済的にも、精神的にも準備が整ったな、という気持ちがあった。ワーキングホリデーに参加できるのは30歳までだ。

29歳の私は会社を辞め、高校生の頃から夢だったワーキングホリデーに行くことにした。一年間日本を離れることで唯一心配だったことは、付き合って5年半になる彼氏と離れることだった。

別れるつもりは毛頭なかったものの、結婚する、しないの言い合いばかりを繰り返す日々が続いていた。ワーホリに行くと伝えた際、彼は応援してるから、と言っただけだった。

出発の日、彼は仕事で急きょ見送りに来れなくなり、最後に会うこともできなかった。心のどこかで、最後の日には、何か将来のことについて前向きな言葉をかけてくれるんじゃないかと期待していた自分がいて、心底落胆したのを覚えている。

そんな状態だったから、日本で出会って以来ずっと友達で連絡を取り合っていたカナダ人の彼からアプローチされた時は本当に驚いた。友達以上の感情はなく、最初は断り続けていたものの、彼の情熱に押される形で、私の心も揺さぶられていった。

そうして今、私は日本に帰国し、また仕事を始めた。今私の彼氏はカナダにいる。私のことを、彼自身より誰よりまず最初に大切にしてくれる。
何もかも、食べ物も、思い出も、家族の話も何もかもすべてシェアしようとしてくれる。私はすっかり安心して彼と一緒にいれるけれど、だからこそ、私も彼のことを大切にしたいと思う。安心感のなかにも義務感があるような感覚がする。

彼と出会ってから、一日の時間の感覚が大きく変わった。生活もシンプルになった。何より心に大きな余裕ができた。今なら、どれだけこだわる必要のない結婚にこだわっていたのか分かる。

以前も遠距離だったけど、今度は国を越えてしまった。考えだしたら答えの出ない不安ばかりが頭をよぎるけれど、今は言葉も習慣も異なる彼との恋愛を楽しみたい。